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ポケモンGOと拡張現実(AR)を利用したマーケティングの未来
拡張現実(Augmented Reality、略してAR)という技術自体は以前からあるものですが、位置情報と拡張現実を活用したゲーム「ポケモンGO」の登場により、この技術は一般にもよく知られるようになりました。拡張現実とは、現実世界を映した映像にグラフィックや音を重ね合わせ、現実世界を拡張させる技術のことです。たとえばポケモンGOの場合、ユーザーの画面には、目の前にある道路や風景が表示され、その中にゲームのキャラクターが現れます。
ARテクノロジーはこれまでにもマーケティングに活用されていましたが、ポケモンGOのような、瞬く間に社会現象になるほどの大ヒットゲームの登場は、広告へのARの活用にとって、強い追い風となります。バーチャルモンスターを捕まえようとしている顧客がリアルビジネスにもたらす価値を、企業も早速理解しています。ポケモンGOの開発に関わったNiantic(Googleからスピンオフした企業)は、ゲーム内広告の機会提供を約束しており、今後は、プレイヤーが集まるスポットを企業が購入できる仕組みを提供していく、とも述べています。
今後も、ポケモンGOのようなゲームがAR人気を押し上げていくことが予想されるため、マーケターの皆さんにとっては、トレンドの行く末を見守りながら、この最先端テクノロジーを活用する方法を模索していくのが得策と言えるでしょう。
ポケモンGoがもたらすマーケティングの機会
規模を問わず、様々な企業が、いち早くポケモンGOの波に乗ろうと、対応に乗り出しています。近所のカフェが「ポケストップ」になっていることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。ポケストップとは、プレイヤーがより多くのポケモンを捕まえるために使うアイテムを手に入れられる場所のことです。最初のスポンサー付きポケストップが出現したのは、日本のマクドナルドでした。画面上では、ポケストップの位置にロゴが表示されます。このようなブランディングであれば、あからさまな広告を嫌がるユーザーに疎まれる可能性は少なくなります。プレイヤーの多くがマーケティングを嫌うミレニアル世代であることを考慮すると、これは極めて重要な要素であると言えるでしょう。
ポケストップのスポンサーになるという方法以外にも、週末の特別イベントや他のポケストップでのポップアップなど、プレイヤーが集まる場所を様々な形でマーケティングに活用することができます。たとえば、ヒラリー・クリントンの選挙キャンペーンでは、有権者登録イベントをオハイオ州のポケストップで開催しました。企業のオーナー(やキャンペーンスタッフ)ならご存知かと思いますが、多くの場合、何より難しいのは「集客」なのです。
実店舗を持つ小規模企業は、ゲームのスクリーンショットをFacebookに投稿したり、Instagramでタグ付けして投稿した人に割引サービスを提供するという方法でゲームに参加し、ソーシャルメディアのエンゲージメントや売上を向上させています。このようなマーケティング戦略なら、広告予算が限られている小規模企業も、登場してから日の浅い、実績の少ない広告手法で予算を使い果たしてしまう、という事態に陥ることなく、この流れに乗ることができます。
データ収集の機会
企業のゴールは、ただゲームに参加することだけでは十分ではありません。たとえそれが絶大な人気を誇るゲームであっても、一時的な流行で終わる可能性もあるからです。目指すべき真のゴールは、顧客に関する重要なインサイトを得ることです。ポケモンGOのようにプレイヤーのスマートフォンのGPSを使ってその動きを検知するゲームは、ユーザーの行動を把握した上で、関連のあるコンテンツをタイミング良く提供したいマーケターにとって、無限の可能性を秘めています。
ただ、ARゲームやARアプリから収集されるデータの種類は、重大なプライバシーの問題をはらんでいます。ミレニアル世代の人々は、従来の広告に対してかなり懐疑的ですが、皮肉なことに、ARのような新しいテクノロジーのほうが、従来の手法よりも多くの個人情報を収集することができるのです。しかも、NianticはGoogleからスピンオフした企業です。彼らがデータ収集の機会をみすみす逃すとは思えません。
拡張現実(AR)の現状
当然のことながら、世の中の誰もがポケモンGOのようなゲームをやっているわけではありません。だからと言って、ARマーケティングは、プレイヤー以外には活用できないのかと言えば、そんなことはありません。ARは、購入前にシミュレーションするためのアプリケーション、たとえば家具やインテリア雑貨を選びやすくするツールなどにも活用されています。大きな買い物は、時にリスキーです。新しいソファなどは、実際に置いてみないと部屋に合うかどうか分からず、間違った選択をすれば大きな損失を被ることになります。そこで、IKEAやSayduckのような企業は、顧客が自分の部屋にその商品を「置いてみて」、サイズ感や見た目を確認できるようにし、自分に合った商品を選びやすくしました。
似合わない色の化粧品を買ってしまうというのも、損した気分になります。部屋に似合わないソファを買ってしまうよりはマシですが、やはりがっかりしてしまいます。資生堂は、ARを使ったメーキャップシミュレーターによってこのリスクを軽減しました。このシミュレーターを使えば、購入する前に様々なカラーを試して、自分に似合うかどうかを確認することができます。
食品や日用品の買い物も、ARによって、よりシームレスな体験になります。2012年に発表された IBMのARアプリを使えば、店内の陳列棚にスマホのカメラを向けるだけで商品をすばやく比較することができるのです。アプリには、商品情報や顧客の設定に基づくランキングが表示され、一部の商品ではクーポンも表示されます。このクーポンも、メーカーにとってマーケティングの機会となります。
拡張現実とソーシャルメディア
ポケモンGOのプレイヤーは、現れたポケモンのスクリーンショットを次々にInstagramに投稿するなど、自分のアドベンチャーをソーシャルメディアにこぞって記録しています。かわいらしいキャラや意外な場所に現れる人々の群れなどは、シェアしたくなる楽しいコンテンツとなります。
さらにARは、セルフィーの楽しみ方をも、新たなレベルへと引き上げてくれます。フラワークラウン(花冠)や犬のエフェクトなど、セルフィーをかわいく加工できる多彩なフィルターが用意されているSnapchatは、マーケターに大きなチャンスをもたらしています。たとえば、化粧品会社やファッションブランドなら、新しいスタイルやトレンドを「試して」、そのセルフィーをソーシャルメディアに投稿できる仕組みを作ることができるでしょう。疑似体験のできるこうしたコンテンツは、自然とその友人やフォロワーの目を引き、自分たちもセルフィーを撮ってシェアせずにはいられなくさせるはずです。
今後に向けて
破竹の勢いで人気を博したポケモンGO。この流行が今後どうなっていくにせよ、ポケモンGOがARを一躍有名にし、これまでとは違った形でその可能性を世に示したことは間違いありません。ある意味これは、ARの新しい活用法に企業がどう反応し、どう取り組んでいくかを示すケーススタディであると言えるかもしれません。賢明なマーケターはこのケーススタディを研究し、そこから学んだことに基づいて自らの選択を行い、画期的な活用方法を編み出していくでしょう。「ポケモン ゲットだぜ!」の決め台詞はまさに、マーケターへのメッセージなのではないでしょうか。


